「時計職人」 スタッフ日記Vol.2

スタッフの K です。先日、ずっと使っている腕時計の電池が切れたので、家の近所のディスカウント店に持っていきました。ところが、そこに併設している修理コーナーでは、電池交換ができないと言われてしまいました。

三宮なら電池交換ができるお店があるかも知れないと思い、会社の人に相談してみると、すぐそばに30年前からやっている時計店があるということで、そこならきっと修理できるよと聞きました。

奥に座っているおじさんに、電池交換をお願いして、よそのお店では交換できないと言われたことを伝えました。おじさんは、机の上から、いかにも年期 の入ったルーペをすっと手元にとり、右目にあてます。手際よくスタンドの明かりを点け、時計を目の高さに持ち上げ、真剣なまなざしで時計の裏表を見て、 じっと時計を観察します。

その視線は、まるでルーペ越しに、時計の中の機械まで透かして見えているのではないかと思うくらい、鋭く、真剣でした。そして、「これなら、交換できるで」と緊張の糸をほぐすように口元をほころばせてくれました。

職人さんが真剣に仕事に打ち込む姿って、なんてかっこいいのでしょう!私はしびれました。

あまりのかっこよさに、このホームページに載せるために写真を撮らせてくださいとお願いすると、「写真は堪忍してぇな」と、宣伝や雑誌の記事に出るようなことは、今までもずっと断っているということです。

どうしてですかと、わけを聞いてみると、「お客さんが好きで使っている時計を直したい一心で、ただ一生懸命修理をやっとるだけや。どっかに出るよう なことは好かんのや」と、厳しい職人さんの表情でおっしゃいました。なんて素敵なんでしょう。私はこんな人がお父さんだったらかっこいいのになぁと思いま した。

というわけで、写真を撮ることはできませんでした。ご了承下さい。

(2007.2.6)