コンタクトレンズの適正使用について(厚生労働省医薬局)
(1)不適正使用の現状
研究対象とした医療機関における1年間の眼科救急外来受診者2257名のうちコンタク トレンズ障害の患者は208名であった。レンズの種類では,ソフトコンタクトレンズが最も多く,ハードコンタクトレンズ及び使い捨てソフトコンタクトレンズがほぼ同数であった
。わが国における販売数を考慮するとハードコンタクトレンズは相対的に救急外 来受診率が低く,使い捨てコンタクトレンズは受診率が高かった。不適正使用が主原因 と考えられる症例について調べたところ,原因としてはコンタクトレンズを装用したま まの睡眠,過剰装用が多くみられた。レンズを装用したままの睡眠は角膜への酸素供給 不足の要因となり,角膜上皮細胞の代謝不全を生じ,角膜上皮びらんなどの眼傷害を起 こす。このほか,レンズの装用脱着不能,装用脱着時のトラブル及びレンズ装用に関す る指導不足により適切な使用,装用がなされなかったと考えられるケースもみられた。
また,消毒,洗浄法が不適切と考えられたケースもあった。水道水のみの洗浄であっ たり,保存液の調製に水道水や飲用ミネラルウォーターを使用していたが,アカントア メーバ角膜潰瘍症例の多くが水道水を何らかの段階で使用していたものであり,レンズ ケアにはレンズケア用精製水の使用が推奨される。
使い捨てレンズのトラブルでは,いったん眼からはずした1日用使い捨てソフトレンズを再装用することによるトラブルも報告されている。
(2)背景
眼科専門医以外での購入による安易な処方、取扱指導不足
(3)安全対策
コンタクトレンズの適正使用に関する情報については,すでに添付文書等に記載され、注意喚起が行われている。しかしながら,装着者自身の取扱いに問題がある場合も少な くなく,以下の点について,装着者への適正使用情報の徹底を図ることが必要である。
(1)定期的検査の重要性の啓発
眼科専門医での定期検査を受けましょう
眼痛時,連続的な異物感を感じるときなどにはレンズ装用を中止して専門医を受診することは言うまでもなく,自覚症状がない場合であっても障害を生じる場合もあり,定期的に検査を行う必要がある。また,使い捨てコンタクトレンズのデザインは限られており,必ずしもすべての患者にフィットするとは言い切れないケースがあるため定期的に検査を行う必要がある。
(2)ソフトコンタクトレンズ装着前の滅菌処理の徹底
ソフトコンタクトレンズの消毒を行わず,保存液中で長期保存した場合には,レンズ
保存液よりpseudomonasを検出した例もあり,適切な処理を行う必要がある。
(3)レンズケア用の精製水使用の推奨
アカントアメーバ角膜潰瘍症例の多くが何らかの段階で水道水を使用していたことから,コンタクトレンズの洗浄や,保存液の作製には水道水ではなく,レンズケア用精製水を使用することが必要である。
(4)ハードコンタクトレンズの洗浄の徹底
ハードコンタクトレンズは消毒過程はないが,除蛋白質操作を含む適切な洗浄が必要であるので指示に従った洗浄を適切に行う必要がある。
(5)1日用使い捨てソフトコンタクトレンズの適正使用
1日用使い捨てレンズを装用したままの睡眠は角膜への酸素供給不足の要因となり,角膜上皮細胞の代謝不全を生じ,角膜上皮びらんなどの眼障害を起こすおそれがあるので,定められた装用時間内の装用とし,就寝前には必ずはずす必要がある。
表3 症例の概要
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コンタクトレンズは、高度管理医療機器です。お買い求めの際には眼科での診察が必要です。